「ポン」「ポン」「ポン」と、あちこちで花が開く。その様子を、一方で百姓たちが、別の方向からは穢多たちが、見つめている。花は開いてワタになった。畑一面、白いワタの色で次々と被われてゆく様子が想像できる。「正助、「よくやった」と父親が言う。百姓たちが思わず駆け出す。穢多たちも駆け出す。そして抱き合う。
綿花は室町時代に国産化が始まっていましたが、それが拡がるのは江戸時代になってからです。そして、明治になると消えていきます。つまり、日本で綿花が大量に栽培されたのは江戸時代だけのことになるようです。「江戸時代=綿花の時代・木綿の時代」であったことを押さえておきます。

そして水やりです。
綿花の成長には大量の水が必要でした。そのために水やりは欠かせません。たんごを担いでの水やりは重労働でした。その際に水を無駄にしないための用具が開発されます。

綿花は肥料にお金がかかりました
二葉が出たときに、綿の根元へ穴をあけ、菜種油やごま油の油かす、干鰯を入れるからです。これは高価なものでした。さらに、約2週間後に、鍬で筋を引き、人糞尿を薄めた「水肥」をやります。これを夏までに3回、施肥しますが、早くしないと葉だけ茂って実のつき方が少ないと言われました。
綿花は、肥料のやり方で収穫に大きな差が出たようです。それだけに栽培に知識と経験が必要でした。
間引きもする必要がありました。
①綿花栽培しかしない家は、綿仲買がやってきて、実をつけたままの綿花を問屋に売る。
②繰屋が多くの人を雇って、繰綿機で実を取り去り「繰綿」にする。その繰綿を問屋に売る。
③綿問屋は海運、陸運を使って各地方に販売する。
④受け取った先の荷主が店で売り捌く。
⑤店から「綿打」に出すと、綿弓で「打綿」にして、篠巻(篠竹に巻くこと)にする。
⑥これを糸に紡いで枠にかけ、「かせ糸」にする。
⑦かせ糸が仲買に売られ、さらに諸地方の織口 (織り人)に売られる。
⑧織口は縞木綿にする場合はこの段階で染め屋に出し、 染め屋からもどってきたものを織る。
⑨仲買が織所をまわって布になったものを買い集め、問屋へおろす。
⑩問屋から呉服屋へ行く。
⑪糸を染めずに織った白木綿は、仲買から仕入れ屋の手にわたり、 そこから染めや絞りなどに出してから、呉服屋へおろす。
「綿は人手にかかる事十四、五段を経て用をなすもわたといや 綿花栽培のはじまりのなれば、国民をにぎはすの大益あり」
経済活性化とは、働く機会(人手にかかる事)が増え、多くの人が職を得ている状態です。輸入に頼れば国の支出ばかり増えるが、自分たちで働いて布を織り上げれば、国内で人を豊かにできる、と考えていました。彼の考える豊かさとは、いつでも仕事があり、汗水流して働き、多くの人が収入を得られるというものでした。
河内の綿織物業者と買付問屋
河内では豊かな百姓が、問屋(商人)と結びつき、問屋から原料や道具などを借りて、家内で手工業による綿織物をつくるようになります。木綿の問屋制家内工業の形成です。上図には、農家に織機をおき、織物を織っているところや綿織物を買いに来ている商人が描かれています。
綿布は、麻などのそれまでの繊維に比べるとはるかに丈夫でした。その丈夫さゆえに、17 世紀後半になると帆布として用いられるようになります。

A 当時の構造船技術の進歩で、大型の帆船が登場します。そうするとそれまでの菰や筵の藁による帆の船に比べて、綿の帆布は横風や逆風に強く、水夫の数も少なくて済み、航海の所要日数を短縮させる効果がありました。北前船などの遠距離航海が可能となったことで、廻船業が発達につながります。
漁網の改良は、鰯の漁獲量を増加させます。綿の栽培には多くの肥料を要することは、先述しました。地引き網で大量の鰯が獲れて、干鰯に加工され金肥として流通するようになります。綿花栽培と鰯漁は、ウインウインの関係になります。
このように木綿産業の発展が新たな産業を生み出して行くことになり、社会を発展させる原動力になります。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
参考文献
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