これによると、山林はつぎの3つに分類されています
a 寺内山林分b 樺山前後山林分c 吉岡界分
bは観念寺の背後の尾根線上にある樺山を西限とする山林です。東限が「尊阿寄進」とされているので、aの西側にあったことが分かります。寄進者の一人は「壇上殿」とあり、延文2(1357)年に「桑村本郡内恒名山地等」を寄進した越智信高のことだと研究者は考えています。この寄進状からは「山地一所」とあり、bのうちで樺河以西の山林が信高により寄進されたことが分かります。もう一人の寄進者である土佐殿は、正平15年(1360)に「桑村本郡内得恒名山野地等」を寄進した人物です。bの樺河以東の部分を寄進した人物のようです。
①筆頭の壇上殿は、biの寄進主体でもあった越智信高で、延文元年の寄進状にみえる人物
②2人めの土佐殿は、bⅱを寄進した人物ですが、寄進状が残っていないので寄進地がどこだったのかは分かりません。
「観念禅寺々領 山野地事 四至 右件山野等者、為古岡庄領家之間、所本寄進当寺也」
ここからその位置は、吉岡荘領家方に属し、西限はCの西限に一致し、東限は吉岡地頭方であったことが分かります。以上のデータを地図上に落としたのが上図です。 これをみると、観念寺背後の山林が広い範囲にわたって寺領とされたことが分かります。これは以下のように2つに区分できます。
c 吉岡界分が古岡荘内(領家方・地頭方)に含まれる山野地a・b得恒名の山林
そうすると、「a寺内山林分」を寄進した尊阿の存在が大きかったことが見えて来ます。続いて、b・C共通の寄進者として名前のみえる壇上殿と土佐殿です。「壇上殿=越智信高」は、AとBに連署する三五名の人々の筆頭に署判している人物です。彼の署判の上部には「盛康方壇上」とか「盛康方新居」という注記がつけられています。ここからは彼が新居盛康の流れであることがうかがえます。
以上から、1340~50年代に氏人・一族の中心的存在であったのは、信高だったと研究者は判断します。
信高は、観念寺の裏山から大明神川北岸にかけての但之上の地に居館を構えていたので「壇上殿」と呼ばれたのでしょう。土佐殿については実名は分かりません。ただ「新居殿」とも呼ばれていることから、新居氏の一員であったことは確かです。このほかの寄進者を見ておきましょう。
それが承久の乱で河野氏に従って法皇側について負け組となっていまい、新居郡の多くの所領を失います。その対応として、新居郡から桑村本郡へ本拠地を移して勢力回復を目指したことは前回お話ししました。そのため観念寺が創建されたときも、桑村本部内の得恒名田畠を中心に寺領寄進がなされています。尊阿・円心・弥阿をはじめ新居氏の一族が得恒名の寄進者として登場します。ここからも得恒名が彼ら基盤であったことが裏付けられます。
得恒名は越智郡から新居郡まで東予一帯に広く分布していて、新居氏の「先祖開発重代相伝之地」として「関東六波羅殿大番以下諸公事等」を勤仕する対象地でした。新居氏が「諸郷散在得恒名」を本領としていたので、その寄進地も桑村本郡を中心に北は拝志郷から南は古川郷・池田郷まで、広い範囲に分布していることをここでは押さえておきます。
窪氏の寄進地も桑村本郡に多いようです。しかし、安永名・守貞名・定則名などは、新居氏にはない名田畠の寄進です。観念寺にはこれに対応す久米義清寄進状が残されていて、そこからは久米姓をもつ近隣領主で、観念寺から南東約2㎞地点に「久保」という小字が残っています。近隣には久米氏による寄進田畑が多くあるので「万田里」があることと併せて、この辺りを本拠地とする一族であったと研究者は推測します。
① 桑村本部の得恒名田畠を中核として、桑村本部の恒光名・恒正名田畠、田・池田・拝志郷などに散らばる得恒名田畠、②それ以外の部分
このうち創建・再興に中心的役割を果たした盛氏・尊阿・円心・弥阿による寄進所領が、全体の約30%(10町7段)を占めます。彼らの寄進分は寺領注文の冒頭部に、まとめて書上げられています。ここからも彼らが大檀那として特別に位置づけられていたことが裏付けられます。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

「川岡 勉 南北朝期の在地領主・氏寺と地域社会 中世の地域権力と西国社会(2006年)」























































































































































































































































































































































































































































































