はじめに
島を舞台にくりなす人間模様を縦軸に、恋模様を横軸に紡がれた小説「小豆島恋叙情」 「連載」もいよいよフィナーレに近づいてきました。 お読みいただいて「ますます小豆島が好きになったと思っていただければなにより幸い」 と作者も申しております。 第15話までの予定でしたが、みなさんからのコメントをいただいて、中山の千枚田を舞 台にもう一編、書き上げたようです。 それでは連載第13回をお届けします。
小豆島恋叙情 第13話 波と巻き貝 鮠沢 満 作

私の耳は貝の殻
海の響きを懐かしむ
ジョン・コクトー
「あんたに背中撫でられているとき、
背中が溶けてなくなるくらい気持ちよかった」
巻き貝が昔を懐かしむように言った。
「俺はお前さんの背中の波模様が気に入っていた。
あんたの背中の上をすべるとき、
自分の躯がゆるやかに螺旋を描いて造形されていく、
あの未来へと切り込む感覚が好きだった」
寄せる波が波打ち際から言葉を返した。
「あたしゃもう背中の波模様もなくなってしまった。
それにあんたの声も随分と遠くから聞こえる」

入り江にはめ込まれた海岸線を、
真っ白な砂浜が天女の羽衣のように優美に飾り立てている。
無数の貝が波の囁きに耳をすませ、
過ぎし日の思い出を枕に眠る。
巻き貝は波打ち際から何十メートルも離れた砂山に、
殻になって埋もれていた。
背中が溶けてなくなるくらい気持ちよかった」
巻き貝が昔を懐かしむように言った。
「俺はお前さんの背中の波模様が気に入っていた。
あんたの背中の上をすべるとき、
自分の躯がゆるやかに螺旋を描いて造形されていく、
あの未来へと切り込む感覚が好きだった」
寄せる波が波打ち際から言葉を返した。
「あたしゃもう背中の波模様もなくなってしまった。
それにあんたの声も随分と遠くから聞こえる」

入り江にはめ込まれた海岸線を、
真っ白な砂浜が天女の羽衣のように優美に飾り立てている。
無数の貝が波の囁きに耳をすませ、
過ぎし日の思い出を枕に眠る。
巻き貝は波打ち際から何十メートルも離れた砂山に、
殻になって埋もれていた。

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