召集令状 赤紙 石川県 学び舎
中学校歴史 学び舎の教科書に載せられた赤紙
戦争体験を読んでいると「赤紙一枚で戦場に送られた」という言い方によく出会います。召集令状は赤い用紙に印刷されていたので「赤紙」とよばれていたようです。今回は、その召集令状から何が読みとれるかを見ていくことにします。前半部を拡大します。

召集令状 赤紙 石川県 学び舎 前半

読みとれる情報を挙げておきます
①昭和16(1941)年7月18日8:30に金沢師団に招集することを命じている
②受領は、7月10日午後4時45分
③収集対象は予備役になっていた根尾忠で本人の印が押されている
④根尾忠は、成人に達した昭和9年に招集され、その後に予備役になっていた。そこに召集令状が届けられた。当時は26歳になっていたこと。
この召集令状が出された背景を見ておきましょう。
日中戦争の泥沼化の中で、1941年6月22日に独ソ戦が開始されます。これを受けて軍部は、在満州・朝鮮防備という名目で対ソ戦準備のための極秘の大動員が出します。そして7月7日に陸軍は「関東軍特種演習(関特演)」部隊を動員するほか、内地から二個師団等の動員派遣が構想され、約55万人が新たに動員されることになります。そのために長野県や新潟県・北陸地方でも大動員が行われることになります。この召集令状もこの時に出されたもののようです。


赤紙 学び舎 裏側

招集令状の裏側に書かれた「受領書ニ関スル心得」を見ておきましょう。(意訳)
①本人が直接にこの令状を受け取った際には、受領日時と指名を記入し押印して、公布した者に返却すること
②本人不在の時には、戸主・招集通報人などが替わって記銘・押印すること。
③印鑑を持参していないときには、花押や指印も可
ここからは召集令状は郵送されていたわけでないことがうかがえます。戦場での様子を描いた小説や栄映画などには、上官が初任兵に対して「お前等の命は一銭五厘の価値しかない。招集葉書の切手の値段と同じだ」と怒鳴りつけるシーンが出てきたのを覚えていますが、招集通報人という役人がいたことになります。それを裏付ける資料を見ておきましょう。 
赤紙通達人 1

これは奈良県の県立図書館に保存されている「動員用急使」の札です。裏面には次のように記されています。
赤紙通達人2
意訳
この急使いは、(召集令状などの)動員用書類を携行している重要な職務を務めている者である。ついたは、もし事故などに遭った時には、直ちに最寄りの交番や村役場に急報すること。

この札を持っていたのは軍と連絡をとり、在郷軍人を管理していた役場の兵事係でした。
赤紙を各家まで配ったり、戦死の知らせを家族に伝えたりするのも兵事係の仕事だったようです。ここでは次の事を押さえておきます。
①赤紙は徴兵検査の結果、現役兵とならなかった人や、除隊後に予備役になっていた人など、在郷軍人に召集をかける際に発行された。
②赤紙は郵送ではなく、役場の兵事係が直接家まで届け、本人に直接手渡すのを原則としていた
③赤紙の前半部の受領書(署名押印部)は兵事係が持ち帰り、後半部のみが本人の手元に残された

召集令状の切り離し

残された部分もふたつに分割されます。
召集令状の切り離し 信州戦争資料センター



召集令状 赤紙 石川県 学び舎 後半
赤紙の後半部 本人が持ち、入隊時に提出した

一番後の運賃割引証(左端の切り離し部分)には、応召者(召集される本人)が所属部隊へ向かう鉄道や汽船の切符を購入する際、運賃の割引や免除を受けるための記入欄です。ここに出発する駅名や乗車区間、運賃などを記入し、駅の窓口に提示して乗車券と引き換えていました。後払証となっていた場合は、本人負担はなく、乗車指定駅で切り離して目的地までの切符が交付されました。
そして残された中央部分も入隊の時に受付に提出したので、赤紙は本人の手元には残らなかったことになります。
次に召集令状の裏側を見ていくことにします。

赤紙 奈良県 裏側
収集令状の裏側(奈良県)

赤紙の裏側 前半部 
汽車などを利用する場合の注意書き(裏側拡大 一番右側)
赤紙の裏側 
召集令状の裏側 応召員心得(裏面の中央から右側の部分)
  軍隊に入るにあたっての次のような注意事項が記されています。
①招集当日までに持参すべき携行品(軍隊手帳、印章、現金、弁当、日用品など)
②病気や事故などで指定された日時・場所に出頭できない場合の連絡先代理人について
③規則正当な理由なく召集に応じなかった場合、軍法会議や刑罰(懲役・禁錮・罰金など)の対象となること

召集令状の発行・交付までの流れをまとめておきます。
①発行された令状は最寄の警察署の金庫に密封保管
②動員令が発令されると警察官が市区役所・町村役場にこれを持参
③役所役場の兵事係吏員が応召者本人に直接手渡し(不在の場合はその家族に)交付
④令状は本記と受領証の2枚つづりで、本記は部隊までの交通切符代わりになる。
⑤受領証は受取人が受領日と時刻を分単位で記入、捺印の上で官吏に渡す。
⑥官吏はこれを役場に持ち帰り、「召集令状受領綴」という記録簿に保管していた

最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
参考文献
赤紙と徴兵