釜が淵は、塩入からさらに財田川の源流を遡った清らかな谷水が流れている山あいの深淵です。
雨乞い祈願は、ここで行われます。
里人は、コマゴエを十三荷半と、ゴボウの種を用意します。
コマゴエは、堆肥のことです。
稲藁を、細かく切って積み上げて造ります。
田圃に入れると、とてもいい肥料になりました。
田圃の肥料である堆肥を、なぜ、釜が淵へ持って来るのでしょうか。
おまけに、ゴボウ種まで持って・・・?
里人がやって来た後から、山伏もやって来ました。
山伏が雨降らせたまえと祈願をします。
すると、里人たちは持って来た堆肥を、釜が淵のなかへ振り込みはじめました。
十二荷半の堆肥を、残らず淵へ放りこんだからたまりません。
おかしな臭いが、あたりへただよいます。
清らかな淵水は、茶色く濁って流れもよどみがち。
そして、この上から、ゴボウの種を蒔きます。
ゴボウの種は、ぎざぎざでとても気味の悪い形をしています。
指でつまむと、ゴボウの種が指を刺すように感じます。
堆肥十三荷半、ゴボウ種を投げ込んで終わったのではありません。
今度は、長い棒で淵のなかを、かきまぜます。
何度も、何度も、棒でかきまぜます。もう、無茶苦茶です。
釜が淵の水は、濁ってしまいました。
この、釜が淵の清らかな水のなかには、龍神さまがいらっしゃるというのに、水は濁ってし
まいました。きっと龍神さまは、お腹立ちのことでしょう。
そうなのです、それが目的なのです。
龍神さまを、しっかり怒らすのです。
怒ると、雨が降るというのです。
お気に入りの釜が淵の清水が、べとべとに濁ってしまいました。
これはたまらないと、龍神さま雨を降らせて不愉快なものを、すべて流します。
でも、いいかげんな雨では流れないと、激しい大雨を降らせてさっぱりと洗い流します。
ああ、きれいになったと龍神さまも大よろこび。里人も、念願の雨が降ったと大満足。
しかし、まあ、讃岐の人たちはすごいですね。
龍神さまを強迫して、雨をいただくのですから。
龍神さまも、これを楽しんでいらっしゃるのかもしれません。
本当は、仲良しなのでしょうか。
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